在宅勤務がコロナ後も全然衰えなさそうな訳 利便性や効果が実証されオフィス需要にも影響 野口 悠紀雄 . 新型コロナウイルス感染対策として「テレワーク」が注目されている。2月後半から、「在宅勤務指示」を出す大手企業が増え、さらに小中高の休校が重なり、ニュースにおいて「テレワーク」や「在宅勤務」の言葉が飛び交っている状況だ。 関東でも、日々蒸し暑さが増してくるこれからの季節。新型コロナウイルスの感染対策とともに気をつけなければいけないのが熱中症だ。また、外出の自粛によって、運動不足はもちろん、生活習慣が乱れている人も増えている。Terence Toh Chin Eng/Shutterstock.com例えば、体温が上がれば自然と汗をかくが、この汗が蒸発したときに熱が奪われ、体温が下がる。加えて、血液の量が減ると、脳や肝臓などさまざまな器官に血液が十分に行き渡らなくなるため、意識を失うなどの機能障害が起きたりすることもある。塩分濃度の低下は、筋肉のけいれんも引き起こす。いわゆるこむら返りだ。感染予防のためにマスクで口を塞ぐのは仕方がないとして、そこで水分補給をおろそかにして熱中症になってしまっては、元も子もない。リモートワークなどで外出しない日が続いたあと、急に外に出るときには、体が外の暑さに慣れていない可能性を十分に考慮しておいたほうがよいだろう。居酒屋などが休業に追い込まれる一方で、オンライン飲み会などで酒量が増えた人も多い。BLACKWHITEPAILYN/Shutterstock.com梅雨の晴れ間も要注意だ。これからの季節は晴れれば急に気温が上がる。梅雨の湿度の高さと自粛生活で慣れない気温変化が相まって、熱中症リスクがさらに高くなることが予想される。日本気象協会が発表した、2020年の気温傾向と熱中症傾向。オレンジ色の領域は、熱中症の「警戒」領域。赤色は「厳重警戒」領域。7月以降は、北海道を除いたほぼ全域が「警戒」か「厳重警戒」すべき領域とされている。日本気象協会で「熱中症ゼロへ」プロジェクトのリーダーを務める曽根美幸さんと、帝京大学医学部で救急・集中医療を専門とする三宅康史教授に、新しい生活様式ならではの熱中症リスクについて話を聞いた。ストレスフルな自粛生活の影響で、アルコールの消費量が増える傾向にあることも指摘されている。これも熱中症リスクが高くなる要因の一つといえる。例年のように仕事などで毎日のように外出していれば、日常的に汗をかくし、季節の移ろいとともに日々上がっていく気温に体が自然と慣れていく。しかし、2020年は春からの「新しい生活様式」による外出の少ない暮らし方によって、日常的に汗をかいてこなかった人が増えている可能性が高い。また、暑さから汗をたくさんかくと、体から水分や塩分などが失われ、脱水状態になってしまう。脱水状態になると血液の量も減るため、血のめぐりを利用した体温調整の効率も落ちてしまう。熱中症は、外出中に強い日差しがあたることで起きるイメージが強いが、室内でも温度が高ければ十分危険だ。室内での熱中症患者は、エアコンをつけずに家にこもっている高齢者が多い。 室内にいても熱中症になるリスクがあるということだけは頭に入れておいたほうがよいだろう。例えば、学校や学童、保育園、幼稚園に子どもを預けることができず、日中は子どもに手を取られ、仕事は早朝や深夜に行わざるを得なかった人は多い。このような生活ではどうしても寝不足になる。また、在宅で仕事をしていると、つい食事の時間が不規則になったり、栄養バランスがおざなりになったりしがちだ。マスクをして口元に熱がこもると、熱中症のリスクも上がりそうだ。緊急事態宣言が解除されたとしても、新型コロナウイルスの感染予防のためにマスクを着用して外出する習慣を続ける人は多いだろう。「マスク着用が本当に熱中症のリスクをあげるのかどうかは、今のところはっきりとしたことはわかりません。ただ、長時間マスクをつけたまま屋外にいたり、スポーツをしたりするのはやはりよくないと思われます。晴れの日が少ないと、その分熱中症リスクは低くなるようにも思えるが、曇りや雨の日は湿度が高くなり、体の熱を逃がしにくい環境が整う。熱中症リスクもそれなりに高いといえる。ただし、働き盛りの年代でも、糖尿病や高血圧、心不全、内分泌疾患、精神疾患、広範囲の皮膚疾患などの既往歴のある人は熱中症リスクが高いことが知られている。また、暑くなると皮膚の近くにある毛細血管が広がる。皮膚の近くの血管に運ばれてきた熱い血液は、外気で冷やされ体の奥深くへと戻っていく。これも体温を下げることにつながる。特に入浴時は換気をよくしたうえでゆっくりと湯船につかり、発汗を促して汗をかくことに慣れることも熱中症予防に役立つという。梅雨明け後、今夏の気温は平年並みか、平年よりも高いと予想されている。5月25日に気象庁から発表された3カ月予報によると、6月は西日本で前線や湿った影響を受けやすいため、降水量が平年並みか多くなりそうだ。街を歩くと、ほとんどの人がマスクをしている。夏に向かい気温や湿度が上昇してくると、口元に熱がこもり、体調不良になってしまわないか懸念される。しかし、気温が高すぎると、皮膚の近くにある毛細血管を介して熱を体の外に逃しにくくなる。さらに、湿度が高く風も弱いと、汗が蒸発しにくくなるので、体に熱が留まりやすくなってしまう。例年通りの熱中症対策はもちろんだが、今年は、特に注意すべきと肝に銘じておいた方がよいだろう。既往症がなくても、肥満傾向にある人はもちろん、運動不足だったり、生活リズムが乱れていたり、普段あまり汗をかいていないような人は、体温調節の機能がうまく働きにくく熱中症リスクが高いといえる。体も気温の変化に慣れていないため、久々に通勤などで外出すると、突然の暑さに直面することになる。アルコールには利尿作用があるため脱水状態を促すうえ、体温をあげる作用もある。二日酔いになると、体が弱っているため、熱中症リスクは高いといえる。アルコールを飲むときには、十分な水もいっしょに飲むように意識するとともに、翌日に体調がすぐれないときは、無理に外出するなどの熱中症リスクが高い行動をしないことも大切だ。感染対策として、在宅勤務をしたり、不要不急の外出を避けたりする「新しい生活様式」で過ごす今年の夏は、単純に考えると熱中症リスクは減りそうだ。私たちの体の奥深くの温度は、さまざまな仕組みによって37℃程度に維持されている。「まず、自分が過ごす部屋がいつごろ暑くなるのかを把握してほしいです。通勤していたときは、1日中家にいるわけではなかったので、日中の日当たりの良さを把握できていないものです。気づいたら室温が上がってしまっていることを避けるためにも、適宜室温調節をできるようにしたほうがよいでしょう」では、「新しい生活様式」では、どのようなところに注意すべきだろうか。日本気象協会の曽根さんは、こう語る。暑さに慣れていないため、外出時に急に温度が上がっても自律神経による発汗や皮膚近くの毛細血管を広げて血流を増やすといった温度調整がうまく機能せず、例年よりも熱中症になりやすくなっている可能性があるのだ。大人は大丈夫でも、小さな子どもには堪えられない場合もある。子どもを連れて外出する際には、より注意が必要だ。 一部の地域ではすでに梅雨入り。関東でも、日々蒸し暑さが増してくるこれからの季節。新型コロナウイルスの感染対策とともに気をつけなければいけないのが熱中症だ。外出などを控える、感染対策としての「新しい生活様式」での暮らしは、一見すると熱中症リ 2020/05/24 10:00. こうした問題は、自宅を仕事場にするのでなく、各地にサテライトオフィスを分散配置し、そこで働く形態をとることによって解決しうるでしょう。オフィスは、「従業員が毎日集まる場所」から、重要な会議や共同作業のための「ミーティングスポット」に変わるでしょう。日本で在宅勤務があまり進まないのは、技術的な理由によるというよりは、「日本型の働き方」による面が大きいと思われます。在宅勤務で働く場合に最も重要なのは、成果主義、ひいては能力主義に転換しなければならないという点です。IT以外でも在宅勤務永続化の動きがあります。保険会社のネイションワイドは、在宅勤務への永続的な切り替えを決めています。このように、在宅ワークは、従業員と雇用主の両方にとって望ましい働き方となるのです。これまで在宅勤務は、育児や介護などの必要がある場合の例外的な働き方であると位置づけられてきました。雇用主も、多様な働き方を認めることによって、人材の確保が以前よりも容易になります。また、家賃の高い大きなオフィスを借りる代わりに、小さめのスペースを借りることによって経費の削減になります。もちろん、すべての仕事を在宅勤務に切り替えることはできません。これは、約3割の下落だった株価より大きな下落率です。その後回復しましたが、5月18日で1593であり、株価の回復に比べて回復率は低くなっています。このような動向は、上で述べたような都心オフィス需要の先行き減少を見越したものと解釈できるでしょう。アマゾンとマイクロソフトは、10月まで在宅勤務の方針を継続。グーグルやフェイスブックも、今年末までの在宅勤務を認めています。その意味で、上でみた動きは、「時代の転換点になる」可能性を秘めています。こうした変化に対応できる組織が未来を拓くことになるでしょう。また、オフィスにおけるデスクトップPCほどセキュリティー面で保護されていない可能性がある家庭のPCが攻撃を受ける状況が生じています。在宅勤務の拡大は、オフィス市場に大きな影響を及ぼす可能性があります。在宅勤務は、従業員にとって魅力的なオプションであるばかりでなく、雇い主にも利益をもたらします。在宅勤務の広がりは、都心部のオフィスに対する需要を減少させ、地価に影響を与える可能性があります。IBMが2万5000人を対象に実施した調査によると、労働者の54%は、フルタイムで在宅勤務リモートワークを続けたいと考えています。ところで、東証REIT指数と都心5区のオフィス賃料には、これまで一定の相関がみられました。しかし、コロナ感染防止のためにやむをえず始まった在宅勤務によって、自宅のほうが生産性は上がり、業務がうまくこなせることもあるとわかったのです。こうした人々がはびこる組織から脱却できるかどうかが、日本における在宅勤務の成果を決めることになるでしょう。在宅勤務は、コロナ期の特殊現象ではなく、働き方の大きな変化となる可能性を持っています。在宅勤務こそが、「基本的な働き方」になりえます。ところが、日本の組織では、これまでは、成果よりもオフィスにいるかどうかが評価されていました。上司に「おい」と呼ばれたときに、「はい」と答えられるかどうかが重要だったのです。日本でも、新型コロナウイルスの拡大を契機にして、在宅勤務が広がりつつあります。そして、在宅を永続化する企業が登場しています。しかし、少なくとも、多くのサービス業(とりわけ、高度サービス業)とあらゆる産業の管理部門については、「在宅が基本的な働き方」という変化が起きるのです。在宅勤務リモートワークは、従業員にとって魅力的なオプションです。昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する――。野口悠紀雄氏による連載第17回。在宅勤務体制となったことで、オフィス運用コストの削減が見込まれる一方で仕事の効率はまったく変わらないとし、削減分の費用について事業継続を支える国内の全パートナー(従業員)に還元する「オフィスコスト還元プログラム」を実施するとしています。Facebook で「いいね」を押すと、似たようなストーリーをご覧いただけますツイッター社は、新型コロナウイルス対策で始めた在宅勤務について、従業員が望めば永続的に続けられるようにすると発表しました。日本を含む全世界の約5000人の従業員が対象です。製造業では、工場に出勤する必要があります。そもそも1カ所に集まって働くという形態は、産業革命によって出現した工場制工業によって始まったものです。また、対人サービス業も、全面的な在宅勤務への切り替えは難しいでしょう。現在も、業務上やむをえず出社が必要な場合のみ感染予防対策を講じたうえで一部出社を認める体制となっています。2020年2月までは2000を超える水準であり、2月20日に2250の高値をつけました。ところが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月19日には1145とほぼ半分にまで下落しました。動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴは、新型コロナウイルスの収束後も、全社員約1000人を原則として在宅勤務とする方針を固めました。動画の編集作業なども自宅で対応できており、業務への支障は出ていないということです。コロナ禍を機に、アメリカのIT大手企業の働き方が大きく変わりつつあります。日本では、住宅事情が良好でないため、自宅での仕事には、さまざまな障害があります。とくに、学校が休校になっていることから、子供が仕事の邪魔をする場合が多いと言われます。テレワークになってビデオ会議が導入されても、中間管理職は、「部下がPCの前にいるか?」をチェックするのに躍起になっています。こうした中間管理者を「いるか族」と読んでもいいでしょう。悪天候の日に無理して出社する必要がなくなり、通勤ラッシュからも逃れることができます。IT系の企業が解約するようになれば、オフィスの市場は大きく崩れるかもしれません。つまり、実際のオフィスの大部分は本質的には不要なことがわかったからです。在宅勤務は会社にとっては望ましくない形態で、オフィスでの仕事が基本という考えがありました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、さまざまな企業で導入された在宅勤務(リモートワーク)。この先、コロナが収束したとしても、これを永続化しようとする企業がIT関連を中心に広がりつつあります。ただし、在宅勤務にいくつかの問題があることも、事実です。とくに日本では、働き方の基本を成果主義に転換する必要があります。都心に通勤しないで済むなら、郊外や田舎に住んで働くこともできるでしょう。そして、住居費を節約することができます。コロナが終わったとしても、少なくとも都心のオフィスに全員分の業務スペースを確保する必要性はなくなってくる可能性があります。そうすれば、都心のオフィス需要は大きく減少するでしょう。厚生労働省の調査によると、テレワークの実施はオフィスワーク中心の人でも全国平均で約27%にとどまりました。東京でも約52%です。多くのオフィスワーカーが長時間の通勤を避ける傾向が強まり、それを在宅勤務に切り替えられることがわかったからです。GMOインターネットグループは、1月27日から渋谷区、大阪市、福岡市のオフィスに勤務するグループ従業員4000人を在宅勤務に切り替えました。