All Rights Reserved.作家のペンネームの由来はさまざまである。有名なところでいえば江戸川乱歩は、敬愛する作家のエドガー・アラン・ポーの名を日本語風にもじったものだという。二葉亭四迷は「くたばってしまえ」をもじったものだとも言われている。彼の父親にその言葉を投げつけられたことから由来するのだとか。では樋口一葉や夏目漱石の筆名には、どういう意味がこめられているのだろうか。今までこの名前が本名だと思っていた人も、少なくないのではないだろうか。ペンネームだけではない。作品の登場人物も、きっと様々な理由があって命名されているに違いないのだ。例えば夏目漱石の「こころ」に出てくる友人の名前は「K」である。普通ならば勝彦などと、名前で書くところをわざと「K」としている。その不気味さ、クライマックスに近づくにつれてこのイニシャルがどんどん圧迫感を帯びて迫ってくる感じ。これは狙ってつけているのだ。夏目漱石の本名は夏目金之助。22歳の時に初めて漱石という名を使い始めた。中国の故事を間違えた「漱石枕流」という言葉があり、これは、石で口をすすぎ、川の流れを枕にする、という意味である。本来は川で口をすすぎ、石を枕にするという意味(枕石漱流)なのに、そう書いた人は決して自分の誤りを認めなかった。この負けず嫌いっぷりを漱石はいたく気に入って、ペンネームにしたのだという。それは本人が負けず嫌いだったかららしい。私は最近、脚本を書く。先日「バニーボーイズ」という脚本で、お坊ちゃんキャラに望巳、子分キャラに葵、と、綺麗な名前を付けたら演出家にダメ出しを食らった。名前だけ見てもそのキャラがどんな人物かわかるくらい、わかりやすい名前にするようにと言われたのだ。どんな風にすればいいのかと迷った末に、お坊ちゃんキャラには育之助、子分キャラには浩と付けたらOKだった。名は人を現す。登場人物の名前や作者の名前の由来も考えながら物語を読むと、新たな一面が見えてくるかもしれない。さて知りたい人はあまりいないかもしれないけれど、私、内藤みかのペンネームは元々は内藤美果だった。官能的な小説を書くこともあり、作品がみずみずしく美しい果実として在りたい、という願いを込めている。後に姓名判断をしたら、ひらがなにしたらものすごく運気が良くなるというので、変更してしまったけれど。きっと多くの作家さんも、ペンネームにはさまざまな思いを入れていると思う。

夏目漱石と聞いたらなにを連想しますか?「吾輩は猫である」「坊っちゃん」「草枕」などは誰でも知っている小説だと思います。さらに夏目漱石といったら旧千円札のモデルにもなっていましたよね。ここで少し豆知識なんですが、夏目漱石の本名は夏目金之助(な 1.川柳とは「川柳」は、俳諧連歌から派生した近代文芸です。俳句と同じ五・七・五の音数ですが、「季語」や「切れ」の決まりがなく...今回は面白いペンネームの由来をいくつかご紹介したいと思います。1.雲は最も日常的で身近な自然昔の人は、雲は山で生まれると考えていたようです。確かに山ではよくガスが発生し、それが地上から見...4.女性が女性(男性が男性)であることをカモフラージュするための異性風か中性的な名前しかし「三十三」は字面が良くないと言われたり、あるいは「散々(さんざん)」と読むことができたり、「味噌蔵(みそぞう)」と呼ばれることを嫌って、「直木三十五」に改名したそうです。二葉亭四迷(1864年~1909年)のペンネームの由来は、「予が半生の懺悔」によると処女作「浮雲」に対する自分自身の卑下です。特に、「坪内逍遥の名を借りて出版したこと」に対して、自身を「くたばって仕舞(め)え」と罵ったことによるものです。それ以降改名することはありませんでしたが、理由は「三十六計逃げるに如かず」と言われるのが嫌だったからだそうですが、菊池寛から「もういい加減に、年齢とともにペンネームを変えるのはやめろ」と忠告されたからだとも言われています。江戸川乱歩(1894年~1965年)は、「怪人二十面相」「少年探偵団」などで有名な推理作家ですが、このペンネームはアメリカの小説家で「探偵小説の祖」と呼ばれるエドガー・アラン・ポーをもじったものです。北村薫(1949年~ )は埼玉県北葛城郡杉戸町出身の小説家、推理作家です。代表作は「空飛ぶ馬」です。内山亜紀(1953年~ )は東京都板橋区出身の漫画家です。ロリコン漫画を数多く書いています。美水(よしみず)かがみ(1977年~ )は埼玉県幸手市出身の漫画家です。代表作は「らき☆すた」です。新聞小説では「浅香のぬま子」や「春日野しか子」というふざけたペンネームを使ったこともあるそうですが、戯作者の名前のようで、私はこれには幻滅します。34歳の誕生日を迎えた時に、本人は「直木三十四」と書きましたが、編集者が勘違いして「直木三十三」と書き直してしまい、本人はそれを訂正せずにしばらく使っていました。髙村薫(たかむらかおる)(1953年~ )は大阪市出身の小説家です。代表作は「黄金を抱いて翔べ」です。31歳の時に、「直木三十一」のペンネームで「時事新報」に月評を書いたのが文筆活動の始まりで、以後誕生日を迎えるたびに、「三十二」「三十三」と改名していました。さとうふみや(1965年~ )は埼玉県大宮市出身の漫画家です。代表作は「金田一少年の事件簿」です。大今良時(おおいまよしとき)(1989年~ )は大垣市出身の漫画家です。代表作は「マルドゥック・スクランブル」です。1.超訳とは最近、「超訳ニーチェの言葉」とか、「超訳古事記」、「超訳資本論」などと、本のタイトルに「超訳」と付けた本をよく見...(野田 弘志)最近、「超写実絵画」(あるいは単に「写実絵画」)というのが静かなブームを巻き起こし、注目を集めています。カメラ...阿佐田哲也(1929年~1989年)は、「麻雀放浪記」などで有名な麻雀小説家・雀士です。皆さんは「ボヘミアン・ラプソディー」という映画を見るまでに「クイーン」というバンドをご存知だったでしょうか?私は恥ずかしなが...夏目漱石(1867年~1916年)のペンネームは有名なので、ご存知の方も多いと思いますが、中国の故事に由来しています。ところで余談ですが、一葉には夏目漱石の長兄・大助との間で縁談の話があったそうです。一葉の父・則義が東京府の官吏だった時の上司が、漱石の父・小兵衛直克だった縁からです。ところが、則義が直克にたびたび借金を申し込んできたことを快く思わなかった直克が、「上司と部下というだけで、これだけ何度も借金を申し込んでくるのに、親戚になったら何を要求されるかわからない」と言って、破談にしたそうです。「文学に理解のなかった父親に罵られた言葉による」というのは、誤った俗説です。(2)正岡子規(本名:正岡常規(つねのり)、幼名は処之助、のち升(のぼる)と改名)「直木」は本名の植村の「植」を分解したもので、「三十五」は年齢を元にしたものです。彼は1885年に専修学校(現在の専修大学)を卒業後まもなく、坪内逍遥宅に通うようになり、その勧めで「小説総論」を「中央学術雑誌」に発表しています。この時のペンネームは「冷々亭主人」でした。一葉は24歳の若さで亡くなる直前の1894年12月から1896年2月の間に、「大つごもり」「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」などの名作を次々に発表しました。これは「奇跡の14ケ月」と呼ばれています。大阪人らしく、ふざけたり面白いことが好きな「いちびり精神」の持ち主だったようです。作曲家の久石譲(ひさいしじょう)(1950年~ )のペンネームは、アメリカの作曲家クインシー・ジョーンズをもじったものです。正岡子規(1867年~1902年)は22歳で結核になり、喀血(かっけつ)した時に、ペンネームを「子規」としました。「子規」とは「鳴いて血を吐くホトトギス」と言われるホトトギスのことです。この「漱石」というペンネームは、「負け惜しみが強い頑固者」という意味で夏目漱石の性格にぴったりだと今では誰しも思うのですが、元々は正岡子規のペンネームの一つでした。それを漱石が気に入って譲ってもらったのだそうです。皆さんは「補陀落渡海」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?私は信仰心の篤い近所の人から、和歌山県那智勝浦にある「...推理作家の依井貴裕(よりいたかひろ)(1964年~ )のペンネームは、アメリカの推理作家エラリー・クイーンのイニシャル「E.Q.(いいきゅう)」をもじったものです。「依井貴裕」は音読み(ただし、「井」の音読みは「せい」ですが、これは目をつむりましょう)すると「いいきゆう」となるからです。夏目漱石(1867年~1916年)は、日本人に最もなじみ深い文豪だと思います。私も個人的に最も好きな作家で、現在の私のバックボーン(...なお、彼は「色川武大(いろかわぶだい)」のペンネームで「離婚」などの小説も書いています。1.岡倉天心が得意の英語でアメリカ人をやり込めた話「茶の本」で有名な明治時代の思想家・文人の岡倉天心(1863年~1913年...直木三十五(さんじゅうご)(1891年~1934年)といえば、その名を冠した文学賞の「直木賞」で知られているぐらいで、小説家としてはあまり知られていませんし、その評価はそれほど高くないようです。1.音楽業界のゴーストライター2014年に、「耳の聞こえない作曲家」として売り出していた佐村河内守(さむらごうちまもる)氏(...怪奇小説家の朝松健(1956年~ )のペンネームは、イギリスの怪奇小説家アーサー・マッケンをもじったものです。このペンネームは、麻雀を打っているうちに徹夜してしまい(いわゆる「徹夜マージャン」)、思わず「朝だ!徹夜だ!」と言ってしまったことから付けたそうです。尼子騒兵衛(あまこそうべえ)(1958年~ )は尼崎市出身の漫画家です。代表作は「落第忍者乱太郎」です。ホトトギスには、「時鳥、不如帰、霍公鳥、杜鵑、沓手鳥」など様々な漢字表記がありますが、正岡子規も多くのペンネームを持っていました。「獺祭書屋主人(だっさいしょおくしゅじん)、竹の里人、香雲、地風升、野球、越智処之助(おちところのすけ)」など54種類もあり、「漱石」もその一つでした。このブログのハンドルネーム「historia」は私の歴史好きに由来しています。「そんなこと誰が興味あるねん!!」とツッコミを入れられそうですが、私はシンプルで気に入っています。1.「野人暦日なし」(やじんれきじつなし)サラリーマンを完全リタイアした翌日から何日間かは、長年の習慣で朝早く目が覚めました...なじみ深い作家や文学者、作曲家などのペンネーム(筆名)でも、その由来が何なのか知らないことも多いのではないでしょうか?