Powerの業界ベンチマーク調査は、そうした観点でも読み解くことができる。 このような背景を踏まえると、今後のカーディーラーにはどのような点が重要になると考えられるだろうか。そこで重要になってくるのが、口コミだ。飲食店舗でも車の選択でも、インターネット上の口コミは大きな影響力を持っている。メディアというとテレビやラジオを思い浮かべる人が多いかもしれないが、そうではない。口コミの信頼性が高い時代では、人がメディアになる。いくらイメージアップ広告を出しても、実際に購入した人、サービスを受けた人、従業員がマイナスの口コミを書けば消費者の評価は下がる。経営としては、従来のメディアの活用法や、広告として発信しているメッセージの見直しを含め、自分の店を選んでもらうための戦略を考えていく必要があるのだ。自動車に置き換えると、新車の保有年数は平均7年ほどだが、新たに魅力的な商品が生まれれば「買ってみよう」「買い替えよう」と考える消費者も増える。高齢者や若い人が車を買うきっかけになるかもしれない。また、自動運転が普及すると、運転席という概念が薄れる。自動車がいわば移動する部屋になり、居住性や快適さが求められる。結果として、10年後のカーディーラーは車内のインテリアを売ることになるかもしれない。そのような変化に合わせ、ビジネスモデルや戦略を変えていくことが重要になる。「別業態への進出」は、企業が持つ強みを生かして多角化を図るということだ。カーディーラーはそれぞれ、売る力、顧客との接点、人を集める力などの強みがある。それを武器として新たな事業に踏み出すことも、業界構造の変化対応に結びつくだろう。変化の二つ目は、顧客との関係性の変化である。他業種ではすでにインターネットを通じて商品・サービスを購入するのが当たり前になっている。この傾向は中長期で見ても変わらないだろう。小売業界内では、アマゾンの売り上げが右肩上がりであるのに対し、リアル店舗の代表ともいえるウォルマートが減収減益となった。高額商品はECに向かないと考える人もいるが、すでに生命保険などはインターネットで加入するケースが増えている。その点で自動車は遅れていて、前述の通り、やっと新車のネット販売が始まったばかりだ。自動車業界に関しては、新車の販売状況や国内の自動車保有台数は例年と比べて大きな変化はなく、横ばいの状態が続いている。中古車についても販売台数等の数値はほぼ例年と同水準だ。ただし、中古車販売を含む自動車関連企業では、新たな売り方やサービスが始まった。例えば、サービスステーション業態では、カーリース事業を手掛けるだけでなく、大手ポータルサイトと提携して新車のインターネット販売を開始する企業が現れた。初年度の目標台数こそ少ないが、新車をECサイトで販売する試みは初めてであり、話題性がある。高齢者層を成長市場と捉える場合は自動運転が一つのキーワードになる。シェアリングエコノミーは販売台数の減少につながるが、自動運転は増加につながる可能性がある。自動運転の普及予測では、楽観的に見た場合で2030年に40%、悲観的に見ても20%くらいになるといわれている。一般的に市場では普及率が20%になると「広まっている」「普及してきた」と実感されることが多い。少し長めの時間軸で考えるのであれば、2030年に向けた動向にも注目しておく必要がありそうだ。自動運転は、高齢者に限らず、運転慣れしていない層にも支持される可能性が高い。つまり、これまで営業担当者主体でやってきた興味づけや提案といった仕事が、デジタルネイティブ・移民とのやりとりであれば、インターネット内で完結できてしまうのである。2016年時点で実際に車を購入する際の情報収集源は、インターネットがショールームを上回ってすでに1位となっている。情報収集機能だけでなく、ネット販売に利便性が高くなれば、今後拡大していく可能性は高いといえる。営業担当者の確保についても同じである。信用力やアピール力がある優秀な営業担当者は、自分のネットワーク内であらゆる商品・サービスを売ることができる。車が売れる営業担当者は、家や保険も売れるものだ。力がある人は自らを個人事業主として位置付けながら、独立または半独立という形で仕事をするようになるだろう。つまり営業担当者のエージェント化である。所属して勤務するという従来のやり方から、契約して売ってもらうというやり方にも対応するための準備が、将来的にはカーディーラー業態にも必要になるかもしれない。そのためにも、会社の価値と魅力を高めて「この会社で仕事をしたい」と思ってもらうことが重要だ。ここで押さえておきたいのは、シェアリングは利用するコストを下げるためのものだという点だ。つまり業界全体として見れば価格破壊をもたらす一因であり、カーディーラーの収益にも結びつきにくい。国内景気の動向を見ると、6年前後の周期で上下するトレンドが見られる。一般的には2020年の東京五輪に向けて景気が上昇していくと見られているが、2013年前後を景気上昇の起点と捉えると、20年までに景気上昇が一服し、厳しい環境に直面する可能性も考えられる。そのような状況を乗り越えていくために、少し長めの時間軸で、これから起こりうる市場の大きな変化を見据え、戦略を考えてみよう。消費者の所得面から見ると、例えば年収400万円くらいの層では、車を買うのではなく、共有することによって移動手段を確保するケースが増えるのではないかと予想できる。カーシェアやライドシェアといったシェアリングエコノミーだ。カーディーラーは地域に根ざした企業であり、地域社会に貢献するという使命を持つ会社も多い。そのような社会的姿勢が評価される会社は人を引きつける力を発揮できるだろう。会社の価値が高まれば、インターネット上の口コミ評価も上がり、消費者に選ばれる可能性も高まる。これからのビジネスを考える際には、環境の変化を捉えることが大切だ。同時に、自社がどのように変わり、成長していくかを考え、消費者や従業員に理解・共感される方針と方向性を打ち出していくことが重要だ。これからのディーラー事業について考えるに当たり、まずは直近の小売・自動車関連業界の動向を振り返っておきたい。ライドシェアでは、すでにUberやnottecoなどが広く認知されるようになった。都内なら15分も待たずに目的地へ向かう車に乗ることができて、非常に便利である。料金面でのメリットはまだ小さいが、規制等が緩和されていけばさらに利便性が高まり、普及していく可能性があるのではないか。現状は都市部が中心だが、地方での普及も見込める。企業との提携などを通じて、移動手段がない高齢者が施設と自宅を行き来する際に活用するケースが増えるかもしれない。一方、IoT(モノのインターネット化)によるデータの収集・蓄積・分析は、個々の消費者に向けた商品・サービスのカスタマイズにつながる。データをうまく活用すれば、商品・サービスの付加価値を高めることができ、収益率や利益率の向上にも結びつけられるだろう。この違いを明確に把握しておくことが重要だ。 Power日本法人のオートモーティブ部門 執行役員の木本卓氏は言う。購入を検討している時、商談、納車、6カ月点検、1年点検、車検など、ディーラーがユーザーに対してアクションできる機会は実はとても多いのです。インターネットでの口コミも自動車購入の大きな決め手になっています。カスタマーエクスペリエンスの改善という視点は、J.D. 世界的にも大きな力を持つ日本の自動車業界。グローバルに事業展開しており、学生からも人気です。この記事では自動車業界の現状・課題、今後の展望を分かりやすく解説。自動車業界への理解を深めて …
自動車ディーラーで営業職として働く皆様、仕事辞めたくなっていませんか?きっと辞めたくなっている人だらけだと思います。そもそも自動車ディーラーという仕事は、顧客との距離が妙にちかいもの。それ故にクレームや質問が営業職の皆様へ、昼夜問わずに直接 自動車ディーラーとは、主に自動車を小売する事業である。 自動車ディーラーは新車販売、中古車販売、自動車整備等のサービス・部品販売に分けられるが、各自動車メーカーが株式の一部を保有するメーカー系の正規販売店と正規販売店から仕入れて販売する地場独立系業者に大別される。
Powerの「日本自動車セールス満足度調査(SSI)」と「日本自動車サービス満足度調査(CSI)」によると、車の購入に際して、主な商談場所としてディーラー店舗に出かけているユーザーは2001年が57%だったのに対して、2017年は84%と、大幅に増加している。 EV化、自動運転、ライドシェアサービスやカーシェアサービス……自動車業界は今、大きな変化を迎えている。そしてもう一つ、いつの間にか大きく変わっていたことがある。ユーザーの車の「買い方」、逆の視点から見ればディーラーの役割だ。「投資をどの分野に振り分けていくか。その判断において、日本のメーカーには海外メーカーとは異なる傾向が見られます。 メーカーやクルマに対する評判の多くは、今、クルマの品質もさることながら、お客様に対応したセールスマンやサービススタッフの良し悪しによるところが大きくなっています。「クルマの品質については、グローバルで見ても以前ほどの大きな差がなくなってきています。どのメーカーの、どの車を選んでも、日常的に使用する分には大きな違いはありません。クルマがエンストすることなど、今の時代には稀有な事象となっています。「ウェブサイトやアプリで予約できるシステムがあれば、本来は来店時の対応をもっとスムーズにできるはず。『いらっしゃいませ』ではなく『○○様、いつもありがとうございます 』と言えるはずなのです。実際、高級車ディーラーの中には、来店時にクルマのナンバーを読み取り、来店者を把握するサービスを導入している店舗もありますが、まだレアケースです。本来は全ての自動車ディーラーが取り組む価値のあることです」(木本氏)例えば、メンテナンス時の予約は増えているが、その手段はまだ電話がメイン。今やカー用品チェーンでは整備のネット予約は当たり前だ。ディーラーとのサービス品質にある種の逆転現象が生じている。ユーザーの車の買い方が変わってきた。ディーラーの役割も変わってきている。自動車業界を俯瞰して見てきた立場として、木本氏は「IT化の取り組みをもっと推進するべきだ」と言う。木本氏が示唆するのは、工業製品としてのクルマの品質は、もはや100点に限りなく近づいている、ということだ。これから多大な投資をすべき部分は98点の改善ではなく、まだ80点しか取れていない部分を95点にすることではないか、という指摘だ。「例えば、SSIとCSIで高評価を獲得しているレクサスは、セールスマンとアフターサポートの連携を近密にしたり、日本の伝統的な礼儀作法などを取り入れるなど、顧客体験の向上に取り組んでいます。それがクルマ自体の品質はもちろん、SSIやCSIでの高評価に直結しています」(木本氏)顧客体験(CX)の高さという面でみるとディーラーはホテルなどのサービス産業と比べるとまだまだ弱い。メーカーの直営ではないという構造的な問題はあるものの、勉強会を行って他業種の接客の様子を学んでいるディーラーも出てきている。J.D. 自動車ディーラーと、町の中古車販売店・整備工場マーケティング手法や顧… 自動車ディーラーの営業戦略のポイントとは・・ | リフォーム集客講座|営業ゼロで高額受注獲得の秘訣! Powerの業界ベンチマーク調査は、そうした観点でも読み解くことができる。 Power日本法人のオートモーティブ部門 執行役員の木本卓氏は言う。購入を検討している時、商談、納車、6カ月点検、1年点検、車検など、ディーラーがユーザーに対してアクションできる機会は実はとても多いのです。インターネットでの口コミも自動車購入の大きな決め手になっています。カスタマーエクスペリエンスの改善という視点は、J.D.